盤面の強化ガラス内には、川中島(現在の長野県長野市)の地形を3Dレーザーで立体彫刻。
盤面台四方には四神である、玄武、青龍、朱雀、白虎の彫刻、そして中央の盤面裏には黄龍の彫刻が施されている。
天板の強化ガラス内には、それぞれ武田家と上杉家の家紋が3Dレーザーによる立体彫刻であしらわれている。
戦国大名の武田信玄と上杉謙信をモチーフにデザインされた王将と玉将の駒。
飛び駒である飛車と角行には、鬼神である風神雷神を擁し、熾烈な争いであった川中島の合戦を表す。
成駒は、自軍の旗をコマに刺すことで表現する。
攻守の要となる銀将は、2種類を用意。手練手管を駆使する王将(武田軍)側には女忍を。謹厳実直のイメージが強い玉将(上杉軍)側には武将の銀将を配置し、それぞれの軍の特徴の違いを表現している。合計の駒の数は、将棋の通常駒数の40駒にプラスして、成駒を示す短旗が6本×2と、金将専用の旗が4本×2追加される。
王,玉短旗6×2
【W:7.6mm × D:0.9mm × H:23.5mm】
王,玉金将用長旗4×2
【W:7.6mm × D:0.9mm × H:31.5mm】
戦国合戦図将棋一式の収納には、武者が鎧を収納していた「鎧櫃」を採用。
「前」の字は「臨兵闘者皆陣列在前」の「前」。『臨める兵、闘う者、皆陣をしき列をつくって、前に在り』という戦いに勝つための縁起をかついだ真言密教の教文。
現行将棋盤への敬意と継承、そして後退
「戦国合戦図将棋〜川中島〜」は、最先端の3D技術と、日本の職人技を融合して、今までありそうでなかったものをテーマに製作されております。
洗礼されたデザインというのは、余分なものを削ぎ落としてゆくのが通常の流れであり、現存する将棋盤や将棋駒は、そういった意味でこれ以上削るところがない、とても洗礼されたデザインといえます。
しかしながら、最新の3D技術と職人技によって、近年まで手作業では不可能だった細かく繊細なカタチが製作可能になりました。
戦国合戦図将棋は、伝統的な形や、そこに包含される意味などを継承し、再構築することにこそ文化的な価値があり、それは同時に先人たちへの敬意の表れでもあるとして、制作が開始されました。ところが、その工程において“削ぎ落として洗練させていく”というデザインの文脈においては、後退することになってしまう、“技術の進歩がデザイン性を後退させる”というアンビバレントな事態を引き起こしたのです。
人が作り出すモノは全て、それらが作られた時代の思想や制作環境を反映しています。デザイン性が後退するということはすなわち、それらを形作っている社会的常識も後退し、現代では忘れ去られてしまった近代以前の社会常識が必然として立ち現れることでもあります。事実、戦国合戦図将棋〜川中島〜は近代以前の呪術的な意匠を纏っています。
インターネットやAIに代表される最先端テクノロジーの進化によるデザイン性の後退、例えば、AIに人間性などを盛り込もうとする行為は、占いや呪い、お告げなどといった近代以前の常識が再度勃興してくることを示唆しています。
川中島合戦は、越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄が、1553年から5回にわたって戦った戦国史の伝説的な合戦で、結局勝敗はつきませんでした。勝敗がついていない合戦は、将棋盤のモチーフとしては最適といえます。
合戦場を縦横無尽に飛び回ることのできる人間はおりません。それは神々の成せる技です。また、戦いとは往々にして神々の動き(運)が勝敗を分けるカギになっています。
強化ガラス内に3Dレーザーで川中島の地形が立体彫刻されています。床に少し光が入ることで、盤面裏にある黄龍の影がうっすら天板の川中島に浮かび上がる仕様になっています。
将棋盤の裏には「血だまり」と呼ばれるへこみがあります。正式名称は「音受け」ですが、対局中に横から口を挟む第三者の人間の首を切り落とし、ひっくり返した盤を台にしてその首を置き血を溜めた、という言い伝えがあるそうです。
戦国合戦図将棋〜川中島〜では、本来であれば黄龍の真ん中にあるべき血溜まりを、黄龍の反対側に反転する形で造形してあります。